11.15.2019

闘魚庵の今後について

皆さんこんにちは!けんごです。 

さて、Twitterをフォローしていただいている方は既にご存知だとはおもいますが、僕は今年で会社を辞めることを決意しました。
これから自分がやっていきたいことを考えると会社勤めでは時間が確保できないと判断したからであります。

当然仕事を辞めることで、現在セレクトショップとして運営しております「闘魚庵」の活動も大きく変化することと思われますので、ここで今後の活動について皆様にご報告をさせていただきます。

僕の目標

僕が『闘魚庵』としての活動で大切にしたいと思っていることは大きく分けて3つあります。
①WC個体の消費的飼育からの脱却
②あらゆるアナバスの収集と繁殖
③海外での採集活動

①WC個体の消費的飼育からの脱却

まず①の「WC個体の消費的飼育からの脱却」ですが、これについてはこのブログやTwitterでも散々お話していますね。
僕は自然資源をいたずらに消費する今のアクアリウムを健全な趣味だとは思っていません。
自然資源の消費ももちろん問題ですが、規制や絶滅などで安定的な流通が確保できなくなるリスクがある。という点に非常に危機感を覚えています。
各々が自分の好きな魚を今後も飼育し続ける為にも、流通の主体をCB個体に移行することは必要なことであると思います。
これは後述する②と③にも関わってきますが、僕は自分の好きなアナバスを今後も飼育し続けたいですし、飼育したい人が飼育できる状況を作っていきたいのでアナバスのCB化を進めていきたいと考えていますし、他の魚種でも「CB化を進めたい!」という方のお手伝いができればと考えています。

以上の点から今後闘魚庵の取り扱いは基本的にCB個体がメインになります。また、時間が確保できますので、種親の手配や輸入の代行などでブリーダー様のお手伝いができればと思っております。

②あらゆるアナバスの収集と繁殖

お次は②の「あらゆるアナバスの収集と繁殖」です。
こちらは文字通りの意味になります。
自家採集や海外のブリーダーさん、漁師さんとのコネクションなどあらゆる手段を使って原種アナバスを1種類でも多く収集し、飼育下での繁殖維持を試みます。
当然ロカリティなどが100%ハッキリしている自家採集が理想ですが、採集する前に絶滅や規制で入手できなくなってしまっては元も子もないので、最初はあらゆる方法で集めていくことになります。(その後採集できたものから系統を置き換える形にする予定です。)
繁殖の1番の目的は自身での飼育ですが、余剰分などは市場に流通させることで皆様に還元できればと考えております。

③海外での採集活動

これは①②を進めるための手段になります(個人的に好きであるという点も大いにありますが…)
現在は日程や資金回収効率などの面でタイでの活動が主となっていますが、仕事を辞めることで時間が確保できますので今後はさらに色々な国へ行ければと思っています。
メインターゲットはアナバスですが、需要があればその他の魚も採集、輸入しますが前述のように消費的飼育をよしとは思っていませんので、ブリーダーさんへの供給を主としその余剰分のみ一般販売するという形をとっていきたいと思っています。(活動資金確保の為生息数の多い種に関しては一般販売用に輸入する可能性もございます)
採集した個体はすべて区単位でのロカリティと水域ごとのロカリティコードを付与して管理、販売していく予定となっております。

お願い

というわけでここまでお話したことが僕の、闘魚庵の今後の活動方針となります。
とても大きなことを考えていますし、資金面などを考慮しても簡単には進まないであろうことは覚悟しております。
しかし、WC個体の消費からの脱却は非常に大切なことであると思っております。

可能な限り自身の力で進めていく所存ですが、皆様のお力をお借りしなくてはならない時が来るかもしれません。
もし僕の夢を応援してくれる方がいましたらその時はお力をお貸しいただけますと幸いでございます。

取り扱い量は減ると思いますが、今まで通り仕入れと販売も継続していきますので今後ともけんごと闘魚庵をどうぞよろしくお願いいたします。

9.10.2019

海外遠征のお誘い

こんにちは!けんごです!
さて、とうとうこの記事を公開することとなりました!

かねてより皆様にお伝えさせていただいていた通り海外での採集やショップ巡りのツアーを開催させていただこうと思っております!

以前簡単な概要は説明したような気もするのですが、ここで改めてご案内させていただきます。

海外遠征のお誘い

さて、僕は海外での採集や魚の買い付けなんかを行っているわけなのですが、それがもうめちゃくちゃに楽しいんですね。
アクアショップで見かけるような魚を自分で採集できるあの喜びと言ったらもう言葉では言い表せないくらい素敵な体験です。 

そんな素敵な体験を皆様にもしていただけたら楽しいのでは!?ということで皆様を海外での採集や買い付けにご案内させてただきます(当然資源管理や安全面の問題もありますのでご案内できる場所は限られますが)

第一弾はタイ王国はバンコク!
ベタの本場タイランドにて原種ベタ(スプレンデンス)の採集やマーケットでの買い物などをサポートさせていただきたいと思っています。 

ここから長々とご説明いたしますのでご興味のある方はご一読くださいませ。

スケジュールと内容

今回の企画に関しては僕がマレー半島で採集を行った後に数日間バンコクに滞在する時間がありますので、そのタイミングで合流してご案内させていただく形になります。

具体的な日程としましては10月25日~31日までバンコクに滞在する予定ですので、その中で日程をご指定いただければご案内させていただきます。

ご案内できるのは主に
・マーケットのご案内
・採集のご案内
の2つとなります。

採集に関しては
・ベタ・スプレンデンス
・クローキンググラミー
・オリジアス・ミヌティルス
・キノボリウオ
・スリースポットグラミー
・アプロケイルス・パンチャックス
・アーモンドスネークヘッド
・ボララス・ウロフタルモイデス
・デルモゲニー
など多様な魚類を観察できるポイントをご案内させていただきます。

生体のお持ち帰りについて

アクアリストなら採集した魚や購入した魚を持ち帰って飼育したいと思うのは当然のことでしょう。
しかし、タイからの生体の持ち出しには検疫等の手続き、日本への輸入時に税関での手続きが必要となります。

現地で採集、購入された魚に関してはすべて当方で輸出入の手続きを行わせて頂きますのでご安心ください。

ただし、種類によっては輸出入の許可が取れないものや当方では手続きができないものもございますのでご注意ください。
基本的に魚類以外の生体の輸出入手続きはお断りさせていただきますのでご了承ください。

例外的に手続きができない魚類
・金魚、錦鯉など
・特定外来生物、未判定外来生物等日本の法律で輸入に規制がかかっている種
・タイで輸出規制や保護の対象となっている種

例外的に手続きのできる魚類以外の生体
・甲殻類(ザリガニや日本での検疫対象種を除く)

ご同行頂くにあたって

ご同行頂くにあたりましていくつか条件をもうけさせていただきます。
下記事項をご一読の上ご検討をお願いいたします。

・2019年10月時点で満20歳以上の方であること
現地で起こったトラブルに関してすべて免責でご同意いただけること
採取地を公開しないこと
過度な採集を行わないこと
・航空券や宿泊先をご自身で手配していただけること
上記の条件をご理解いただける方のみご参加をお願いいたします。

各種リスクについてのご説明

海外旅行という行為自体にリスクはつきものですが、今回は採集活動も行うため非常に多くの危険を伴います。(当然場所の選定に関しては可能な限り安全な場所を選んでおりますが)
下記に主要なリスクをご説明させていただきますのでご一読ください。
狂犬病
タイは狂犬病未清浄地域ですので哺乳類との接触には常にリスクが伴います。
バンコクでの感染例は少ないですが、発症すればほぼ100%死亡する病気ですので、予防接種等の自衛をお願いいたします。

その他感染症
狂犬病のみならず、破傷風や肝炎、住血吸虫、鼻疽、マラリアなど様々な感染症のリスクがあります。
こちらもご自身の判断の上で自衛をお願いいたします。

窃盗
僕は遭遇したことはありませんが窃盗などは非常によく聞く話ですので、こちらもご注意ください。
金銭やパスポートはポケットなどに保管して行動することをお勧めします。

ぼったくり
タイではタクシーやマーケットでのぼったくりが非常に多いです。トラブルになると銃が出てくることもあるのでご注意ください。
マーケットに関しては僕が一緒に回りますのでぼったくりの心配はございません(外国人価格にはなります)

生体の死着
輸送には最善を尽くしますが、時間がかかる関係上、死着のリスクは0にはなりません。
輸入時の死着に関しては免責にてお願いいたします(当方からの発送時は保障させていただきます)


諸費用に関しまして

ごめんなさいお金の話です。
ポイントの公開や輸出入に関しては費用を頂きたく思っておりますのでご了承のほどよろしくお願いいたします。

生体の輸送料(各種手続きの手数料を含みます)
こちらは箱に占める割合と重量で料金を算出しますので生体の種類や大きさによって変動しますが、おおよそ水1リットルで2500円程度を目安としてお考え下さい。
ベタなどは水量が少なくても運べますので1匹あたり1000円程度で運ぶことができると思われます。(生体の大きさなどで変動します)
種類と大きさからある程度の金額は算出できますので、詳しくは個別にご相談ください。


ポイントのご案内
こちらは30000円程度を予定しております。
ご自身で採集されたモノに関してはご自由にお持ち帰りいただけますが、輸送費を追加で頂きます。(現地の資源量に問題を及ぼす量であると判断した場合、一部手続きをお断りさせていただくこともございますのでご了承ください)

マーケットだけの参加や採集だけの参加も可能ですのでご相談くださいませ。


では、皆様からのご連絡お待ちしております!ご不明点などは僕のTwitterアカウントにDMにてご連絡ください!

7.09.2019

持続可能な流通

どうもけんごです。

まず皆様に謝らなくてはいけません。
今回僕が書いた記事が元となった騒ぎで多くの方に多大なご迷惑をおかけしてしまいました。
誠に申し訳ありません。

少し暴走してしまったなと反省をしております。

WCの商業流通に対して僕が思うこと

僕はWCの商業流通全てを否定する気は毛頭ございません。
現地での再生産が可能な範囲で「持続可能な流通」が行われることはむしろ趣味家として喜ぶべきことであるとさえ思っています。
なにを隠そう僕もWC個体が大好きですから。自然界で生きていた個体が目の前にいるあのワクワク感は素晴らしいですよね。


そういった素晴らしい個体たちを持続可能な範囲を守りつつ流通させてくださっている業者さんや関係者様方には本当に頭の下がる思いです。
特に最近の植物、爬虫類業界のこの意識の浸透具合は本当に素晴らしいものであると思います。
当然それらは偶然もたらされた結果ではなく、誰かが頑張ってきたからこそ得られた結果であります。

だからこそそういった方たちの努力を無に帰すWC個体の度を越した大量販売は許しがたいものであると考えています。
とはいえ一部のケースを除き法律に違反しているわけではありません。罪に問われることもありませんし止めることもできません。
そこに善し悪しは存在しません。ただ「各々の立場や個人感情」があるだけです。
それを歓迎する人もいれば憤慨する人もいます。
そして僕は憤慨する側の人間だった。それだけの話なのです。非常に残念ではありますが。

持続可能な流通

僕は時々「持続可能な流通」という言葉を使います。
これは「環境に与えるインパクトが自然界の生産力を上回らない状態」をさして使っています。
つまり「ちゃんと資源管理しながら流通させようね」という意味であります。
コレが叶うのであればそんなに素晴らしいことはありませんよね。
消費者は欲しいものを入手出来る。業者は継続的な利益を得られる。そして環境に大きなインパクトを与えることもない。
夢のようなお話ですがこれがなかなかどうして一筋縄ではいかないのです。

流通のお話

その背景には外国産の生物の流通の仕組みが関わっています。
一部の特殊なパターンを除き、日本に輸入される野生動物の多くは現地の採集業者が採集しています。

一般的な小売の流通経路は
現地採集業者→シッパー→問屋→小売店→消費者となります。(場合によってはどこかが省略されることも少なくないです)

私たちが5000円で生き物を買ったとして現地採集業者に入るお金はどれくらいでしょう?
生き物の値段には元値の他に輸送費や仲介料、ストックにかかかる費用など様々な費用が乗ってきます。そこに各々の業者が利益を乗せるわけです。
日本で5000円では現地業者に入る金額は本当に微々たるものなんですね。
そうなると現地の業者は数を採って売り上げを上げるしかありません。
(最近では問屋や小売店を介さない取引で賢く外貨を獲得している業者もいますが)

それでも現地の人たちにとって自然界にあるリソースは収入を得るための貴重な手段の一つであるわけです。
したがって「採集するな」というのはムリな話なんですね。
買わない選択肢もありますが、ここまで散々働いてもらっておいて「はい、さよなら」とはいきませんものね。それをしても買い取る国が日本から中国や香港になるだけですし。
最善なのは現地の業者さんに儲かって持続もできる採集方法を伝えていくことでしょうし、そういった素晴らしい取り組みをされている方もいますが、それを真似できる方はそう多くはないでしょう。

僕の回答

僕が現在取引をしている漁師さんは僕が「3ペアだけでいい」といえば3ペアだけ揃えてくれますし、多種を数ペアずつでも頑張って集めてくれています。
しかし、彼もやはり数を売りたいようで「これもXぺア集められるよ。どう?」という話は当然持ち上がります。(彼は少しでも合計金額を上げたい訳です。)
僕は必要以上の魚を輸入するつもりはないので丁重にお断りするのですが、その分支払いにはチップとしてかなり色を付けて渡します。

これなら僕は不要な在庫を抱えなくて済みますし、漁師さんも少ない労力で大きな利益を得ることができます。少なくとも僕の仕入れで環境に過剰な負荷をかけるリスクもありません。

僕の懐は若干痛みますが、それは販売時に少し値段を上げて販売すればよいだけです(値段を上げても売れるものを選んで仕入れればよいだけとも言えます)
2000円の魚を5匹売るよりペア10000円の魚を1ペア売る方が僕もはるかに簡単です。

採集に行かなければ普通に暮らせるくらいの利益は出ます(採集に行かなければです。笑)
こういう流通がみんな幸せなんじゃないかなと思うのですがどうでしょうか。

とはいえこれも僕が小規模にやっているからこその手法でもあり、問屋を挟んだりする取引では難しいでしょう。
日本だけでなく、原産国、その他の輸入国が複雑に絡み合ってくるので答えを見つけるのは非常に難しいですし、答えは無数にあるのかもしれません。もしかしたらないのかもしれません。

難しい問題ではありますが、この趣味を長く自由に楽しむためにはクリアしないといけいない問題であると思います。
このまま逃げ切れる世代にはあまり関係のない話なのかもしれませんが、僕たち若い世代は今後の生体販売のあり方について真剣に考えていかないとマズいのでは…と強く感じています。

本当はもっと客観視した記事を書くつもりでしたが主観的でいけませんね…。
思考がクリアになったらまたちゃんとまとめたいと思います。


余談ですが、国産種の乱獲販売はちょっとホントになんのためにやっているのかが理解できないのでここでは言及しません。
あれは僕の脳みそでは理解できない世界のお話です。





業界に思うことと横浜闘魚庵

こんにちは。けんごです。
今回はとあるきっかけから久しぶりにブログを書いております。

多分初めての方もご覧になりますし、初めての方にもご覧いただきたいと強く願っていますので、簡単に僕の自己紹介をさせていただきたいと思います。 

自己紹介

改めまして、けんごと申します。
 熱帯性淡水魚、中でもアナバンティッドの仲間が大好きで、アジアの色々な地域を訪ねて自分の手でアナバンティッドを採集しています。
その片手間といってはなんですが、採集した個体や買い付けた個体を輸入して販売するセレクトショップ「横浜闘魚庵」を運営しております。

夢はアナバンティッドの記載種(約150種)すべてに現地で出会い、それらを自分の手で繁殖させて 「世界一のCBアナバンティッド専門店」を作ることです。
あまりにもスケールが大きすぎてバカバカしい話に思われるでしょうが僕自身は本気で実現したいと思っています。

今回お話ししたいこと

僕は普段お店の宣伝にTwitterを使っています。
個人的にも使用しているので結構な時間をTwitterを見て過ごしているのですが、
先日約7000本のブセをハンターに依頼して採集させたという旨のツイートを見かけました。

これを見た僕は絶句してしまいました。 ここで記載されている「ブセ」とは「ブセファランドラ(Bucephalandra)」のことです(これは同ツイートのツリーに投稿されていたパッキングリストにも記載がありますので間違いありません)

恐らくアクアリウムを楽しまれている方なら一度は聞いたことのある名前だと思います。
どんな植物なのかということは今回問題ではありませんので、興味のある方はググってください。

このブセファランドラ、ここ数年アクアリウムの世界で非常に人気が高く、現地採集の株が大量に輸入されてきました。
成長が遅く、殖やすよりも採ってしまった方が早いので人の入りやすい場所にあるブセファランドラは輸出用に大量に採集されました。

次々に輸入される魅力的なブセファランドラ、消費者はそれを喜んで購入しました。
その結果なにが起こったと思いますか?

こちらはブセファランドラの自生地のついて書かれているブログです。
https://pokoujiaz.exblog.jp/22898923/
https://teamborneo.at.webry.info/201505/article_4.html

このように次々と自生地が壊滅しています。
これで大方ブセファランドラという植物を取り巻く現状は理解して頂けたかと思います。
※ブセファランドラを保護するために努力をされている日本の業者さんもおられます。(現地の方たちに資源を残すための採集方法を伝えたりなど、植物も含めて皆に優しい取り組みです。)

さて、冒頭のツイートのお話に戻りましょう。
当該ツイートをしているお店はその貴重なブセファランドラをあろうことか現地採集で約7000株も輸入し、しかも「販売先が決まっていないので捨て値でバラまくかも」とも。
しかも現地採集株であることを誇らしげに語っているようにも感じます。

他にも日本のイモリやサンショウウオを大量に採集して販売していた爬虫類ショップの話なども最近Twitterを騒がせましたね。

環境保護に関する意識は年々高まっていると思いますが、それでもペット業界はまだまだ遅れているというのが現状です。

いつまでそれでやっていくの?

僕はかれこれ15年ほどアクアリウムという趣味にハマっています。
学生の頃はワイルド個体に心酔したこともありました。
だから偉そうなことは言えません。僕も昔はそういう方針に無自覚に資金を与えていましたから。

大人になった僕は現地に行って自分の五感で色々なことを感じました。
素晴らしい生き物や素晴らしい自然環境からたくさんの感動をもらいました。
そういう感動や経験をこれからも多くの人が自由に感じることのできる世界であってほしいと思っています。

だからこそ今皆さんにお聞きしたいです。一緒に考えて欲しいです。
今回僕がお話したいのは「これでいいのか?」ってことなんです。


自然資源をいたずらに消費するだけの流通形態でいつまでやっていけるんですか?

現地で規制されてしまったらこれから飼育したい人はどうすればいいんでしょう?密漁ですか?密輸ですか?どうせなら大手を振って飼育したいですよね?

絶滅してしまったら?その種類の供給源が完全に断たれてしまったら愛好家の皆さんはどうするんですか?僕たちの住むこの世界から自分の好きな、誰かの好きな生物種が消えてしまったら凄く悲しくないですか?

採れる数が減ったら採集者もいなくなりますよね?そのときはどうしますか?自分で採りに行くんですか?野犬に噛まれて死ぬのが関の山ですよ? 

お店や問屋さんは扱える種類がこれ以上減っても商売を継続できますか? 

これは「業者の問題」でも「消費者の問題」でも「遠い異国の水辺の問題」でもありません。
「ペットトレード」という業態に関わる全ての人が考えていかなければいけない問題であると思っています。

晒し上げたい訳ではないので、今回の件のお店がどこなのか公開したりはしません。(個人感情でいえば非常に頭に来ていますが)
これが現地の環境を考える上でなにかのきっかけになればと思っています。

現在の横浜闘魚庵

僕は冒頭の自己紹介で「世界一のCBアナバンティッド専門店を作りたい」と述べました。これは本気です。欠片も嘘偽りはありません。誰かのためじゃなく、自分のために自分の好きなものを保存したいのです。(その結果で他の誰かも幸せになってくれるのであれば最高です)

僕は「野生採集個体の流通は減らすべきだ」と思っていますし、主張もしていますが当然一人でそんな大きなことを成せるなどと思いあがっているわけではありません。
僕一人でできることなどたかが知れています。

その中で自分が一番守りたい、残していきたいものは何なのだろう?と自問したときに残ったのがアナバンティッドでした。
だからそれだけは守りたいのです。自分の力でできる範囲のことをしていきたいのです。

現在、僕が行っている活動ですがざっくりと下記のようになっております。


  • 改良アナバンティッドの買い付けと販売
  • 原種アナバンティッドの買い付けと販売
  • 自家繁殖用の種親の採集
  • 自家繁殖用の種親の輸入
  • 自家繁殖による系統維持



原種を買い付ける場合は可能な限り現地ブリーダーの繁殖個体を買っています。(資源保護の他にも「単純に繁殖個体の方が綺麗」という面もあります。笑)

また、自家採集については種親と余剰分(保険)として計10ペアまでと決めて現地の個体数を見ながら輸入量を調整しています。(自分だけで持つよりは他の人にも飼育していただいた方が成功率は格段に上がりますので、数ペアは販売という形で頒布しています。) 

種親の輸入ですが、こちらは現在現地の漁師さんと話を進めておりまして、様々な種類を各種1~5ペアの範囲で輸入して自家用と頒布用で振り分けたいと思っています。
本当は自分ですべて採集したいのですが、ボルネオ島などの現状を考えると事態は切迫していますので、現地の漁師さんの力を借りて魚を集めることに致しました。

系統維持に関しては現在数種類自家採集自家繁殖にて維持している系統がございます。 
これらも近親交配などのリスクを考え、野外採集に頼ることなく系統維持をするために頒布をする予定でございます。 

このような形で現在活動をしております。 
今後のことに関しては宣伝じみてしまうのでこの記事では記載いたしませんが、色々な生き物のCB化に貢献できる活動をしていければと考えております。

多分この記事にも様々なご批判やご意見等お持ちのことと存じますが、全て覚悟の上です。 
今の業界のやり方には賛同できません。僕は僕が正しいと思うことをやります。 
自分が変わって周りの人が変わって少しずつ流通の仕組みが変わったら素敵だなと思っています。

つまらない話を長々と失礼いたしました。 
ご意見等は僕のTwitterアカウントにDMいただけますと幸いでございます。 

それでは。

4.05.2019

Labyrinth Collection No7~琉球闘魚~

今回は日本に生息するアナバス、タイワンキンギョとその採集の様子をご紹介したい。

本種について

本種は学名をMacropodus opercularis、和名をタイワンキンギョという。
アクアショップなどでは「パラダイスフィッシュ」の名で販売されているのでそちらの名前の方がなじみ深いという方も多いだろう。

本種は中国、ベトナム、ラオス、日本に生息する。
日本では沖縄県に生息が確認されている。

沖縄県の個体群は在来とする説と外来とする説があるが、結論はまだ出ていないようである。
一応、大陸の物と比較すると繁殖形態に若干の差異があったり、遺伝的に同様の特徴を持つ個体群が見つかっていない(当然サンプル未収集の個体群が由来である可能性もある)などの点が在来である可能性を示しているらしい。

在来かどうかはともかく本種は昔から沖縄でトゥーイュなどと呼ばれ親しまれてきた。
しかし、そんな本種も近年開発などで生息地が減っているらしく、地元のご老人が「昔はこの辺りにも沢山いたんだけどねぇ…。」と話していた。

今回はそんなタイワンキンギョを採集した時の様子をお伝えしたい。

本種の生息環境と採集

私は本種を水田などの止水域に生息しているものだと思い込んでいたが、本種も同属のMacropodus hongkongensisと同様に流水域において確認された。
私が本種を確認したのは河川中流域の抽水植物が生い茂った湿地様の環境である。





採集方法は他のアナバスと同じ要領で植物ごとザルで掬いあげるというものであった。

東南アジアのブリード個体に比べるとシャープな体型をしており、尾鰭の伸長も弱いが、野生的で非常に美しい魚であった。

願わくばこれからもこの湿地帯で人知れず静かに生活してもらいたいものである。

2.18.2019

Labyrinth Collection No6~もっとも有名なアナバス~

今回はもっとも有名なアナバスであろうベタ・スプレンデンスをご紹介したい。

本種について

今回ご紹介するのはスズキ目 キノボリウオ亜目 オスフロネムス科 ゴクラクギョ亜科 ベタ属のsplemdems種である。
アクアリストの皆様であれば本種をもととした改良品種をショップなどで目にしたことがあるだろう。
おそらくもっとも有名なアナバスであろう。

 そんな「ベタ」の原種がこのBetta splendensである。(ベタの改良には同属他種も用いられているので厳密には本種のみがルーツというわけではないのだが…)

「ベタ」のド派手なイメージとは裏腹に原種である本種は地味な色彩をしている。
しかし、各鰭のカラーリングやボディのイリデなどはやはり美しい。
鰓蓋に入る赤いラインがスプレンデンスグループの他種との最も簡単な判別点であろう(他にもこのラインが入る種類もいるのでこれだけで完全に判別することはできないが)

本種の生息環境

私が本種を採集したのはバンコク東部の湿地帯である。(ロカリティコード:THA-002 )
お世辞にも綺麗な環境とはいえないが、水深15㎝ほどのこの湿地帯でクローキンググラミーやスネークスキングラミー、スリースポットグラミー、ボララス・ウロフタルモイデスなどと共に生息していた。
典型的な「いるところにはいる」魚であり、私が本種の生息地を発見するまで4日の時間を費やした。


採集直後の本種。
赤味がかった体色が印象的である。
クローキンググラミー100匹に対して本種1匹程の生息密度であり、個体数は少ない印象を受けた。

本種はタイ国内にひろく分布し、バリエーションも豊富なので今後違うタイプも採集できればと思っている。

2.17.2019

Labyrinth Collection No5~マハチャイエンシス~

月刊アクアライフさんでレポートを掲載していただいたので、これでタイでのアナバス採集の記録を気兼ねなくUPできます。笑

今回はマハチャイエンシス。

本種について



 今回紹介させていただくのはスズキ目 キノボリウオ亜目 オスフロネムス科 ゴクラクギョ亜科 ベタ属のmahachaiensis種である。

本種はサムットサコーンを中心とする「マハチャイ」と呼ばれる地域に分布している。
古くから存在は知られていたようであるが、記載自体は2012年と比較的新しい種である。
あまり知られていないがバンコク県内でも生息地が存在している。

生息環境

私が採集した本種はニッパヤシの生い茂る薄暗い湿地帯に生息していた。
私が本種を採集した湿地帯(マハチャイ地方中部)
ニッパヤシが生い茂り非常に薄暗く、歩きにくい。

底質は腐葉土様であり、水は美しいブラックウオーターであった。

同地で確認した本種の泡巣。
ニッパヤシの中心部に作られており、下には雄親が確認できた。

今回は現地の方に案内していただいての採集だったので、近いうちに自身で採集したいと思っている。
できればバンコク産の個体を採集したいものであるが…。

2.13.2019

Other fishes collection No.5~香港のリザードフィッシュ~

今回は香港のリザードフィッシュをご紹介したい。

本種について

本種はコイ目タニノボリ科タニノボリ亜科Liniparhomaloptera属のdisparis種であると思われる。

1枚目が♂二枚目が♀であると思われる。
メスはオスに比べて二回りほど大きくなるので成熟した個体の雌雄判別は容易であろう。

赤味がかった各鰭が美しいリザードフィッシュであるが、飼育下でこの体色を再現するのはなかなか難しい。

本種の生息環境

本種は前回までに紹介した、香港カワムツ(Candidia spilurs)やハナマガリ(Acrossocheilus beijiangensis)などと同所的に生息していた。
このような流れのある場所の石の下や白泡の下などに多かったように思う。

2.01.2019

Other fishes collection No.4~黄金のハナマガリ~

段々と書くのが楽しくなってきたOther fishes collectionですが、今回は香港に生息する黄金色に輝くハナマガリをご紹介いたします。

本種について


本種はコイ目コイ科ハナマガリ(Acrossocheilus)属のA.beijiangensis種であると思われる。
食性は草食よりの雑食のようである。
近縁他種とはバンドの数や背鰭の形態で区別できるが、特に背鰭の不分岐条にのこぎり状の突起が見られることが大きな特徴らしい。

生息環境

私が本種を観察したのは香港にMacropodus hongkongensisを採集しに行った時のことである。
生息河川は比較的流れが強く、同所的にタニノボリの仲間なども確認できた。


本種の背鰭のアップ。外側に行くにつれて赤くなる黄色の背鰭と黒いスポットのコントラストが非常に美しい。
この写真からでも不分岐条にのこぎり状の突起が存在することが確認できる。

1.25.2019

Other fishes collection No.3~香港のカワムツ~

中国南部の一部と香港に分布するCandidia spilurusと呼ばれる魚がいる。
Other fishes collection3種目はそんなCandidia spilurusをご紹介したい。

本種について


コイ目 コイ科 ダニオ亜科 カワムツ属に属する本種は前述の通り中国南部の一部と香港に生息する。
属を見ていただければ分かるように日本のカワムツと同じ属に分類されており、全体的な雰囲気は似ていると言える。
頻度は低いが稀に観賞魚としての輸入がある。

Candidia spilurusの採集


私が本種を確認したのは香港某所の比較的流れの早い河川であった。
生息密度は非常に高く、川に網を浸けて歩いていると勝手に若魚が入ってくるほどである。
同所的にはホンコンプレコ (Pseudogastromyzon myersi)やホンコンリザードフィッシュ (Liniparhomaloptera disparis)などのタニノボリ類やホンコンヨシノボリ (Rhinogobius duospilus)、香港ハナマガリ(Acrossocheilus beijiangensis)などの比較的流水環境に適応した種が生息している


成熟した雄はマス類のように口先が湾曲し、高い体高と相まって非常に迫力のある姿となる。

1.24.2019

Labyrinth Collection No4~スネークスキングラミー~

Labyrinth Collectionの4種類目となる今回はスネークスキングラミーTrichopodus pectoralisについての記事をお届けしたい。


本種について

本種はオスフロネムス科Osphronemidae、ルキオセファルス亜科Luciocephalinae、トリコポーダス属Trichopodusに属するバブルネストビルダーである。
体長25㎝ほどとこの仲間の中では大型であり、現地では食用魚としても重宝されている。


Trichopodus pectoralisの採集

本種を確認したのはバンコク郊外の湿地帯である。

深さは浅いところで10㎝ほど、深いところでも50㎝程度と非常に浅い湿地帯であった。

同所的にはベタ・スプレンデンスBetta splendens、クローキンググラミーTrichopsis vittata、ボララス・ウロフタルモイデスBoraras urophthalmoides、キノボリウオAnabas testudineusなどが採集できた。
アクアショップ等で見る本種は灰色の体色に黒いバンドが入る非常に地味な印象を受ける魚であるが、採集直後の本種は青とも紫とも緑ともつかない美しい色に輝いていた。
今回はこの1匹のみしか採集できなかったが、近いうちに大型の個体を採集し、ここで皆様にご覧いただければと思っている。

また、前述の通り現地では食用魚としてもメジャーなようで、露天などでこのように頭を落とされた本種が半分干されるような形で並べられている光景を見ることができる。

現地での色彩を見るにもっと観賞魚として評価を得てもいい魚であると思うのだが、如何せん水槽できれいに発色させることが難しい。
次回採集時に輸入する予定なので、飼育下で本種の色彩を引き出す方法も色々と試していきたいと思っている。個人的には水質の設定と日光がキモであろうと考えているのだがはたして…。

Other fishes collection No.2~サラブリー県のフライングバルブ∼

フライングバルブと呼ばれる魚をご存知であろうか?
長い髭と大きな胸鰭が特徴的な小型のコイ科魚類である。
今回はそんなフライングバルブについての記事をお届けしたい。

フライングバルブ

アクアリウムの世界ではEsomus属の魚を総称して『フライングバルブ』と呼んでいる。
恐らくショップで目にする機会が多いのはEsomus danricusであろうか?(この仲間にはあまり明るくないので断定は避けさせていただくが)
彼らは稀にアクアショップで見かけることもあるが、容姿の地味さもあってかいまいちメジャーになり切れていない印象がある。
私も実際に採集するまでは地味な魚だと思っていたのだが、よく見ると非常に魅力的な魚であったので、皆様にもこの魚の魅力を少しでもお伝えできればと思っている。


サラブリー県のEsomus

この魚はタイ中央部サラブリー県の田園地帯で採集した個体である。
長い髭と特徴的な体型からEsomus属の魚であることはすぐに分かった。
恐らくEsomus metallicusであろうと思われるが、前述のとおり私はこの分野にはあまり明るくないので断定は避けさせていただく。

採集地は非常に雰囲気のある田園地帯の素掘りの用水路であった。
同所的にはスリースポットグラミーTrichopodus trichopterusやクローキンググラミー、Trichopsis vittata、デルモゲニーの1種Dermogenys cf. siamensis、プラーチョンChanna striataをはじめ、多くの水生昆虫や半陸性のカニなどが確認できた。(それらについてもいずれ当ブログで記事を書く予定である)

地味な印象のあるEsomus属であるが、採集直後は体側のラインが非常に美しく輝いており、恥ずかしながら私は一瞬パールダニオと間違えてしまった程である。
ラインだけではなくその周囲にも様々な色彩が散りばめられており、とても美しい。
飼育下でこのような色彩を引き出すことができるのかは不明であるが、大きな目や可愛らしい髭なども相まって非常に観賞価値の高い魚であると思う。
サイズも3~5㎝ほどとちょうど扱いやすい大きさである。
個人的には同所的に見られたグラミーなどの中型アナバスとの混泳水槽など味があってよいと思うのだが…。

1.23.2019

Other fishes collection No.1~タイ中部のオリジアス~

「採集で見つけたアナバス以外の魚も紹介したい!」との思いから新しいカテゴリーを立ち上げました。
アナバス以外の魚に関してはこちらで記載していきますのでよろしくお願いいたします。

さて、そんなother fishes collectionの第1回目はタイ中部に生息する小さなメダカのお話。


タイ中部のオリジアス

タイにはオリジアス属のメダカが数種生息しているが、今回はその中でもタイ中部に生息するOryzias minutillusをご紹介したい。

 私が本種を採集したのはバンコクの郊外にある湿地帯である。
キノボリウオやクローキンググラミーと同所的に生息していた。

 水面を漂うように泳いでおり、危険を感じると深場に潜っていくので、網を叩きつけるようにすると簡単に採集できる。
ただし、同属他種と同じく非常にデリケートなので、あまり乱暴に採集したり網を水から出したりすると死んでしまう。
見た目通り非常に繊細な魚である。


 採集直後の本種は腹部と眼が青とも緑ともつかぬ美しい色彩に染まっている。
これは予想なのだが、日本でも夏場に屋外で飼育してあげればこの繊細な美しさを楽しむことができるであろう(冬場は室内で加温してやらねばならないが)

日本の改良メダカも美しいが、このような野生的な美しさもまた素晴らしいものである。
今年の夏は屋外で「ちょっと変わったメダカ」を飼育してみてはいかがだろうか?

1.22.2019

Labyrinth Collection No.3~バンコク近郊のキノボリウオ~

諸事情あってしばらくはタイ遠征関係の多くの記事を書くことができないのですが、キノボリウオなら書けることに気が付いたので更新を…。
というわけで今回はバンコク近郊の湿地帯で採集したキノボリウオ(Anabas testudineus)についてのレポートである。

当種について

今回も対象種の簡単な解説からさせていただく。
当種は東南アジアに広く生息するアナバス科Anabantidae、アナバス属Anabasに分類されるバブルネストビルダーである。
「キノボリウオ」という和名はあまりにも有名であるが、実際に木に登ることはない。
現地では非常にありふれた魚であり、食用とされる。

Anabas testudineusの採集

2018年11月某日私はバンコクの郊外にて採集を行い、今回の遠征の目的であったBetta splendensの採集を果たした。
 その翌日、目的を果たして気の抜けた私はバンコク近郊の湿地帯でのんびりと釣り糸を垂れていた。

 大都会バンコクとは言え、郊外に行けばこのような美しい湿地が存在する。

 コンビニで買ったソーセージを針につけ、待っていると浮きが勢いよく沈んだ! すかさず合わせて抜きあげると、掛かっていたのは大変よい型のAnabas testudineusであった。

 アクアリウムの世界では「地味な魚」であると思われる本種も自然水域で太陽光を浴びるとここまで美しい姿になる。
 確かに色味は少ないが、暗色をベースに様々な色が入っており「Theアナバス」といった素晴らしい魚である。(アナバス属なのでTheアナバスではあるのだが、そういう話ではない)


 小型の個体も釣獲することができた。大型の個体とは体型が異なるのが面白い。


 同所的には ベタ・スプレンデンスBetta splendens クローキンググラミーTrichopsis vittata スリースポットグラミーTrichopodus trichopterus スネークスキングラミーTrichopodus pectoralis タイメダカoryzias minutillus ボララス・ウロフタルモイデスBoraras urophthalmoides などが生息していた。
(これらの魚については2019年1月現在、諸事情によりレポートが書けないので後日記事にできればと思っている)

Labyrinth Collection No.2~アユタヤ県のビッタータ~


当連載2つ目の記事は先日タイにて採集したクローキンググラミー(Trichopsis vittata)についてのレポートをお届けしたいと思う。 タイ遠征では数か所で採集したが、今回はアユタヤ県にて採集した個体群に関しての記録である。

当種について


今回も対象種の簡単な解説からさせていただく。
当種はタイ、ベトナム、マレーシア、インドネシアなど東南アジアに広く生息するオスフロネムス科Osphronemidae ゴクラクギョ亜科 Macropodinae トリコプシス属Trichopsisに分類されるバブルネストビルダーである。
名前の通り威嚇音を出すことが知られている。アクアリウムの世界では古くから親しまれてきたアナバスである。
生息域の広さと止水に生息することから地域によって形態に大きな差異がみられるが、(残念なことに)アクアリウムの世界でそれらの個体群間の変異が注目されることはない。


Trichopsis vittataの採集

2018年11月某日、私はタイ王国アユタヤ県を訪れた。
本来の目的はベタ・スプレンデンス(Betta splendens)の採集であったが、残念ながら同県においてスプレンデンスを採集することは出来なかった。 しかし、帰りがけに寄った小さな止水域で当種に出会うことができた。
前回のホンコンパラダイスフィッシュ(M.hongkongensis)の時とは違い「いかにもアナバスがいそう」といった雰囲気のポイントで採集できた。 

 写真からも分かるようにゴミなどが浮いており、お世辞にも綺麗とは言えない環境である。
同所的に採集できた魚はスリースポットグラミー(Trichopodus trichopterus)のみで、餌となる生物も非常に少なそうな印象をうけたが、個体数は当種が圧倒的に多かった。
タイにおいては「アナバスのいそうな水辺」にはほぼ確実に当種が確認でき、いずれも個体数が非常に多かった。
このことから当種は環境に対する適応能力が非常に高いものと思われる。


Trichopsis vittata当種の変異について

今回タイの4県で当種を確認したが、それぞれの個体群間でかなりの変異がみられた。

  今回のアユタヤ県の個体群は尾鰭中央の鰭条のみが伸長する興味深い表現をしていた。




 帰国後に撮影した本個体群の♂。
尾鰭中央の鰭条は溶けてしまったが、大変美しい色をしている。
大きさは当種としては標準的な大きさであると感じた。(今回確認した4個体群間での比較) 残りの個体群に関しては色々な事情があるので、後日記事にできればと思っている。

Labyrinth Collection No.1~香港闘魚~

Labyrinth Collectionの1種目は香港闘魚ことMacropodus hongkongensis(マクロポーダス・ホンコンエンシス)の採集と繁殖についての記録である。

当種について

まずはこの魚についての簡単な解説をさせていただく。
 当種は香港及び、中国の一部から記録されているオスフロネムス科Osphronemidae ゴクラクギョ亜科 Macropodinae ゴクラクギョ属 Macropodus に分類されるバブルネストビルダーである。
有名な種ではパラダイスフィッシュ(タイワンキンギョ)、チョウセンブナなどが同属となる。 長らくMacropodus concolorであると思われていたが、2002年に分類が整理され、concolor種の消滅に伴い、spechti種やerythropterus種とともに別種として記載された。(erythropterus種に関してはspechti種のシノニムとして扱う動きもあるが、それはまた別の機会にお話しする。)
日本へは2009年に紹介されたとされているが、継続した輸入はない。
 今回は私が当種を採集繁殖したレポートをお届けしたい。

M.hongkongensisの採集

2017年3月某日、私は友人たちと香港を訪れた。
目的はもちろんM.hongkongensisの採集である。
様々なアクシデントはあったが、幸いなことに1度目の採集行にて当種の生息地を見つけることができた。

まず驚いたのが当種の生息環境である。
アナバスとは止水ないし流れのゆるやかな細流に生息するものだとばかり思っていたのだが、当種はかなり流れの早い河川に生息していた。
Liniparhomaloptera disparis、Candidia spilurs、Acrossocheilus beijiangensis、pseudogastromyzon myersiなどが同所的に生息していたことからもそこそこ流れのある河川であることがうかがえる。 

このような流れの強い流域で泡巣を作れるのか?という疑問を抱いたが同河川で数度観察をするうちにその答えを発見することができた。
当種は比較的流れのつよい場所にも生息しているが、繁殖期には岸辺に生えた植物(カヤツリグサの仲間?)の根元の水深が極浅い部分や岩の陰などの止水域を見つけて営巣していた。
稚魚の自然下での生態はまだ確認できておらず今後の課題である。

M.hongkongensisの飼育下繁殖

当種は非常に強健であり、基本的な飼育は同属のタイワンキンギョなどと同じで問題ないようである。
餌への反応も非常によく、様々な餌を食べてくれる。
気性が非常に荒く、複数匹を一緒に飼育すると一番強い個体以外は水槽の隅に追いやられてしまう。 
我が家での繁殖の際はロータイプの60㎝水槽を使い、雌雄判別をしていない成魚を6匹放した。 現地環境の再現のため抽水植物を用いたかったが、屋内水槽であったのでアナカリスを密に植えることで営巣のための基質を確保すると同時に弱い個体の隠れ家を作った。
最初は♀が他の個体を追いやっていたが、一度水位を大幅に下げた後1か月ほどかけてもとの水位に戻したところ♂による営巣が確認でき、その後数日で産卵。♂親は保育を開始した。(♀親は育児には参加しないようだ)
この時点で♂親への刺激となる他の個体と♀親を水槽から取り出し、安心して育児を行える環境を整えてやる。
その後数日間、稚魚はヨークサックの養分や水槽内に発生した微小生物などを食べて成長し、1週間ほどでブラインを食べられる大きさに成長するので、このタイミングで♂親と引き離し人工飼育を開始した。
この後は特に難しいこともなく成長したが、1.5㎝ほどになると小競り合いが多発したので個別飼育を開始した。

簡易的ではあるが以上が当種の繁殖の記録である。

最後に

当種は非常に魅力的な種であるが、生息地の開発などで個体数が減っているそうだ。
実際香港でも人工的に作った池に移植することで当種の個体数増加を図っているらしい。
私が採集をした河川も当種を採集したポイントのすぐ下流は三面護岸になっており、かなり危機的な状況であった。
今後もこの魚を現地で観察できることを願ってやまない。

Labyrinth Collection No.0~プロローグ~

プロローグ

アナバスマニアを自称する私には夢がある。スズキ目キノボリウオ亜目に分類される全ての記載種を自分で採集し、繁殖させることだ。
現在キノボリウオ亜目には約150種の記載種が存在する(学者によって見解が異なるため多少の変動はあるが)。
それらをすべて自分の足と目で探し出し、自分の手で採集し、自分の管理下で繁殖形態を観察することこそが私の生涯をかけた夢であり、当コーナーはその記録を残すための物である。

…と、いうわけで

そんなこんなで、このコーナーは「アナバス各種にフォーカスし、その採集と繁殖の実際を記録する」という目的で立ち上げたものです。
今まで通り採集自体のレポートは上げていきますし、某雑誌の方でもスペースを頂ける限りはレポートを掲載していただく所存でございますが、完全に趣味に振り切ったアナバスオンリーの記事はまた別で残しておきたいなぁ…と思っています。 
採集できなければ更新するネタもありませんので、超マイペース更新のコーナーになりますが、ゆるーく付き合っていただければと思います。