7.09.2019

持続可能な流通

どうもけんごです。

まず皆様に謝らなくてはいけません。
今回僕が書いた記事が元となった騒ぎで多くの方に多大なご迷惑をおかけしてしまいました。
誠に申し訳ありません。

少し暴走してしまったなと反省をしております。

WCの商業流通に対して僕が思うこと

僕はWCの商業流通全てを否定する気は毛頭ございません。
現地での再生産が可能な範囲で「持続可能な流通」が行われることはむしろ趣味家として喜ぶべきことであるとさえ思っています。
なにを隠そう僕もWC個体が大好きですから。自然界で生きていた個体が目の前にいるあのワクワク感は素晴らしいですよね。


そういった素晴らしい個体たちを持続可能な範囲を守りつつ流通させてくださっている業者さんや関係者様方には本当に頭の下がる思いです。
特に最近の植物、爬虫類業界のこの意識の浸透具合は本当に素晴らしいものであると思います。
当然それらは偶然もたらされた結果ではなく、誰かが頑張ってきたからこそ得られた結果であります。

だからこそそういった方たちの努力を無に帰すWC個体の度を越した大量販売は許しがたいものであると考えています。
とはいえ一部のケースを除き法律に違反しているわけではありません。罪に問われることもありませんし止めることもできません。
そこに善し悪しは存在しません。ただ「各々の立場や個人感情」があるだけです。
それを歓迎する人もいれば憤慨する人もいます。
そして僕は憤慨する側の人間だった。それだけの話なのです。非常に残念ではありますが。

持続可能な流通

僕は時々「持続可能な流通」という言葉を使います。
これは「環境に与えるインパクトが自然界の生産力を上回らない状態」をさして使っています。
つまり「ちゃんと資源管理しながら流通させようね」という意味であります。
コレが叶うのであればそんなに素晴らしいことはありませんよね。
消費者は欲しいものを入手出来る。業者は継続的な利益を得られる。そして環境に大きなインパクトを与えることもない。
夢のようなお話ですがこれがなかなかどうして一筋縄ではいかないのです。

流通のお話

その背景には外国産の生物の流通の仕組みが関わっています。
一部の特殊なパターンを除き、日本に輸入される野生動物の多くは現地の採集業者が採集しています。

一般的な小売の流通経路は
現地採集業者→シッパー→問屋→小売店→消費者となります。(場合によってはどこかが省略されることも少なくないです)

私たちが5000円で生き物を買ったとして現地採集業者に入るお金はどれくらいでしょう?
生き物の値段には元値の他に輸送費や仲介料、ストックにかかかる費用など様々な費用が乗ってきます。そこに各々の業者が利益を乗せるわけです。
日本で5000円では現地業者に入る金額は本当に微々たるものなんですね。
そうなると現地の業者は数を採って売り上げを上げるしかありません。
(最近では問屋や小売店を介さない取引で賢く外貨を獲得している業者もいますが)

それでも現地の人たちにとって自然界にあるリソースは収入を得るための貴重な手段の一つであるわけです。
したがって「採集するな」というのはムリな話なんですね。
買わない選択肢もありますが、ここまで散々働いてもらっておいて「はい、さよなら」とはいきませんものね。それをしても買い取る国が日本から中国や香港になるだけですし。
最善なのは現地の業者さんに儲かって持続もできる採集方法を伝えていくことでしょうし、そういった素晴らしい取り組みをされている方もいますが、それを真似できる方はそう多くはないでしょう。

僕の回答

僕が現在取引をしている漁師さんは僕が「3ペアだけでいい」といえば3ペアだけ揃えてくれますし、多種を数ペアずつでも頑張って集めてくれています。
しかし、彼もやはり数を売りたいようで「これもXぺア集められるよ。どう?」という話は当然持ち上がります。(彼は少しでも合計金額を上げたい訳です。)
僕は必要以上の魚を輸入するつもりはないので丁重にお断りするのですが、その分支払いにはチップとしてかなり色を付けて渡します。

これなら僕は不要な在庫を抱えなくて済みますし、漁師さんも少ない労力で大きな利益を得ることができます。少なくとも僕の仕入れで環境に過剰な負荷をかけるリスクもありません。

僕の懐は若干痛みますが、それは販売時に少し値段を上げて販売すればよいだけです(値段を上げても売れるものを選んで仕入れればよいだけとも言えます)
2000円の魚を5匹売るよりペア10000円の魚を1ペア売る方が僕もはるかに簡単です。

採集に行かなければ普通に暮らせるくらいの利益は出ます(採集に行かなければです。笑)
こういう流通がみんな幸せなんじゃないかなと思うのですがどうでしょうか。

とはいえこれも僕が小規模にやっているからこその手法でもあり、問屋を挟んだりする取引では難しいでしょう。
日本だけでなく、原産国、その他の輸入国が複雑に絡み合ってくるので答えを見つけるのは非常に難しいですし、答えは無数にあるのかもしれません。もしかしたらないのかもしれません。

難しい問題ではありますが、この趣味を長く自由に楽しむためにはクリアしないといけいない問題であると思います。
このまま逃げ切れる世代にはあまり関係のない話なのかもしれませんが、僕たち若い世代は今後の生体販売のあり方について真剣に考えていかないとマズいのでは…と強く感じています。

本当はもっと客観視した記事を書くつもりでしたが主観的でいけませんね…。
思考がクリアになったらまたちゃんとまとめたいと思います。


余談ですが、国産種の乱獲販売はちょっとホントになんのためにやっているのかが理解できないのでここでは言及しません。
あれは僕の脳みそでは理解できない世界のお話です。





業界に思うことと横浜闘魚庵

こんにちは。けんごです。
今回はとあるきっかけから久しぶりにブログを書いております。

多分初めての方もご覧になりますし、初めての方にもご覧いただきたいと強く願っていますので、簡単に僕の自己紹介をさせていただきたいと思います。 

自己紹介

改めまして、けんごと申します。
 熱帯性淡水魚、中でもアナバンティッドの仲間が大好きで、アジアの色々な地域を訪ねて自分の手でアナバンティッドを採集しています。
その片手間といってはなんですが、採集した個体や買い付けた個体を輸入して販売するセレクトショップ「横浜闘魚庵」を運営しております。

夢はアナバンティッドの記載種(約150種)すべてに現地で出会い、それらを自分の手で繁殖させて 「世界一のCBアナバンティッド専門店」を作ることです。
あまりにもスケールが大きすぎてバカバカしい話に思われるでしょうが僕自身は本気で実現したいと思っています。

今回お話ししたいこと

僕は普段お店の宣伝にTwitterを使っています。
個人的にも使用しているので結構な時間をTwitterを見て過ごしているのですが、
先日約7000本のブセをハンターに依頼して採集させたという旨のツイートを見かけました。

これを見た僕は絶句してしまいました。 ここで記載されている「ブセ」とは「ブセファランドラ(Bucephalandra)」のことです(これは同ツイートのツリーに投稿されていたパッキングリストにも記載がありますので間違いありません)

恐らくアクアリウムを楽しまれている方なら一度は聞いたことのある名前だと思います。
どんな植物なのかということは今回問題ではありませんので、興味のある方はググってください。

このブセファランドラ、ここ数年アクアリウムの世界で非常に人気が高く、現地採集の株が大量に輸入されてきました。
成長が遅く、殖やすよりも採ってしまった方が早いので人の入りやすい場所にあるブセファランドラは輸出用に大量に採集されました。

次々に輸入される魅力的なブセファランドラ、消費者はそれを喜んで購入しました。
その結果なにが起こったと思いますか?

こちらはブセファランドラの自生地のついて書かれているブログです。
https://pokoujiaz.exblog.jp/22898923/
https://teamborneo.at.webry.info/201505/article_4.html

このように次々と自生地が壊滅しています。
これで大方ブセファランドラという植物を取り巻く現状は理解して頂けたかと思います。
※ブセファランドラを保護するために努力をされている日本の業者さんもおられます。(現地の方たちに資源を残すための採集方法を伝えたりなど、植物も含めて皆に優しい取り組みです。)

さて、冒頭のツイートのお話に戻りましょう。
当該ツイートをしているお店はその貴重なブセファランドラをあろうことか現地採集で約7000株も輸入し、しかも「販売先が決まっていないので捨て値でバラまくかも」とも。
しかも現地採集株であることを誇らしげに語っているようにも感じます。

他にも日本のイモリやサンショウウオを大量に採集して販売していた爬虫類ショップの話なども最近Twitterを騒がせましたね。

環境保護に関する意識は年々高まっていると思いますが、それでもペット業界はまだまだ遅れているというのが現状です。

いつまでそれでやっていくの?

僕はかれこれ15年ほどアクアリウムという趣味にハマっています。
学生の頃はワイルド個体に心酔したこともありました。
だから偉そうなことは言えません。僕も昔はそういう方針に無自覚に資金を与えていましたから。

大人になった僕は現地に行って自分の五感で色々なことを感じました。
素晴らしい生き物や素晴らしい自然環境からたくさんの感動をもらいました。
そういう感動や経験をこれからも多くの人が自由に感じることのできる世界であってほしいと思っています。

だからこそ今皆さんにお聞きしたいです。一緒に考えて欲しいです。
今回僕がお話したいのは「これでいいのか?」ってことなんです。


自然資源をいたずらに消費するだけの流通形態でいつまでやっていけるんですか?

現地で規制されてしまったらこれから飼育したい人はどうすればいいんでしょう?密漁ですか?密輸ですか?どうせなら大手を振って飼育したいですよね?

絶滅してしまったら?その種類の供給源が完全に断たれてしまったら愛好家の皆さんはどうするんですか?僕たちの住むこの世界から自分の好きな、誰かの好きな生物種が消えてしまったら凄く悲しくないですか?

採れる数が減ったら採集者もいなくなりますよね?そのときはどうしますか?自分で採りに行くんですか?野犬に噛まれて死ぬのが関の山ですよ? 

お店や問屋さんは扱える種類がこれ以上減っても商売を継続できますか? 

これは「業者の問題」でも「消費者の問題」でも「遠い異国の水辺の問題」でもありません。
「ペットトレード」という業態に関わる全ての人が考えていかなければいけない問題であると思っています。

晒し上げたい訳ではないので、今回の件のお店がどこなのか公開したりはしません。(個人感情でいえば非常に頭に来ていますが)
これが現地の環境を考える上でなにかのきっかけになればと思っています。

現在の横浜闘魚庵

僕は冒頭の自己紹介で「世界一のCBアナバンティッド専門店を作りたい」と述べました。これは本気です。欠片も嘘偽りはありません。誰かのためじゃなく、自分のために自分の好きなものを保存したいのです。(その結果で他の誰かも幸せになってくれるのであれば最高です)

僕は「野生採集個体の流通は減らすべきだ」と思っていますし、主張もしていますが当然一人でそんな大きなことを成せるなどと思いあがっているわけではありません。
僕一人でできることなどたかが知れています。

その中で自分が一番守りたい、残していきたいものは何なのだろう?と自問したときに残ったのがアナバンティッドでした。
だからそれだけは守りたいのです。自分の力でできる範囲のことをしていきたいのです。

現在、僕が行っている活動ですがざっくりと下記のようになっております。


  • 改良アナバンティッドの買い付けと販売
  • 原種アナバンティッドの買い付けと販売
  • 自家繁殖用の種親の採集
  • 自家繁殖用の種親の輸入
  • 自家繁殖による系統維持



原種を買い付ける場合は可能な限り現地ブリーダーの繁殖個体を買っています。(資源保護の他にも「単純に繁殖個体の方が綺麗」という面もあります。笑)

また、自家採集については種親と余剰分(保険)として計10ペアまでと決めて現地の個体数を見ながら輸入量を調整しています。(自分だけで持つよりは他の人にも飼育していただいた方が成功率は格段に上がりますので、数ペアは販売という形で頒布しています。) 

種親の輸入ですが、こちらは現在現地の漁師さんと話を進めておりまして、様々な種類を各種1~5ペアの範囲で輸入して自家用と頒布用で振り分けたいと思っています。
本当は自分ですべて採集したいのですが、ボルネオ島などの現状を考えると事態は切迫していますので、現地の漁師さんの力を借りて魚を集めることに致しました。

系統維持に関しては現在数種類自家採集自家繁殖にて維持している系統がございます。 
これらも近親交配などのリスクを考え、野外採集に頼ることなく系統維持をするために頒布をする予定でございます。 

このような形で現在活動をしております。 
今後のことに関しては宣伝じみてしまうのでこの記事では記載いたしませんが、色々な生き物のCB化に貢献できる活動をしていければと考えております。

多分この記事にも様々なご批判やご意見等お持ちのことと存じますが、全て覚悟の上です。 
今の業界のやり方には賛同できません。僕は僕が正しいと思うことをやります。 
自分が変わって周りの人が変わって少しずつ流通の仕組みが変わったら素敵だなと思っています。

つまらない話を長々と失礼いたしました。 
ご意見等は僕のTwitterアカウントにDMいただけますと幸いでございます。 

それでは。